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日常日記

振袖

母に買ってもらった振袖。
成人式といつかの初詣と兄の結婚式。
3回着てお嫁に行ったから、
それからずっと桐箱に入れたまま。
振袖はレンタルでいいと言っていた私に、
母が着物くらい持たせてあげたいと、
家計が大変な中買ってくれたのに、
クリーニングも虫干しもろくにしないまま、
私はまた独身に。

もう着る事のない振袖だけど、
カビは生えてないだろうか。
シミは出来てないだろうか。
最近気になって仕方なかった。

いつも行く商店街。
着物屋さんの前を通ると、
着物の丸洗いキャンペーンの張り紙を見つけた。

クローゼットの上段に入れてある桐箱。
1人で下ろすのが大変だから引っ越した時に入れてそのまま。
キャンペーンのお陰で、
久々に振袖とドキドキのご対面。
大きなカビやシミがなくてホッとしたけど、
長襦袢にはシミがちらほら。
今の私の状況で、
着物の丸洗いにお金を使っていいのか迷ったけれど、
この機会を逃すと二度としないような気がして、
それと、
染み付いた彼との思い出も洗い流せるような気がして、
思い切って振袖と長襦袢の2枚を出す事にした。

母にキャンペーンの事を伝えたら、
私も出そうかなと、
実家のリビングで着物のお披露目会。
保存状態が悪かったのか、
シミが結構ついてしまっていて、
お金をかけてキレイにした所で母も着る機会がないし、
私が貰おうにも袖丈が合わないから、
泣く泣く諦める事に。

桐たんすに着物を直していると、
見覚えのあるフォトブック。
開けてみると、
そこには和装で写った彼と私。
彼と過ごした時の写真は全て置いてきたから、
久々に見るあの頃の私。
彼の顔はなるべく見ないようにした。
結婚式は洋装だったから、
写真だけでもと撮った和装の写真。
私だけ切って残しておこうかとも思ったけれど、
思い出したくない人の横で撮った写真なんて、と、
フォトブックを分解しごみ箱に捨てた。

時間の経過と共に消えていく彼の面影。
小学生の甥っ子はもう覚えてないらしい。
そうやって、
家族の中から、
私の中から、
消えていってくれたらいい。
そしていつか、
キレイサッパリ忘れた頃、
彼に感謝出来る時が来るんだろうな。
今はまだ、
思い出を消す作業で必死だけど、
キレイになった振袖を見たら、
その時に少し近づける気がする。