彼について
去年の今頃は
楽しく笑いあってた
同じ物を見て同じ物を食べて
同じ時間を共有して
心の底にある違和感に
そっと蓋をし過ごしてた
少しずつ少しずつ
積もっていく違和感を
信頼という言葉で
必死に打ち消し
いつか時間が解決してくれると
変わっていくあの人を
ただずっと側で見つめてた
とても優しい人だった
尊敬できる人だった
何十年も一緒に過ごしてきた日々
喜怒哀楽しながら共に生きてきた日々
信頼し尊敬し共に生きてきた人は
人間の形をしたなにかに変わっていた
何年も人を騙し
罪を重ね続けてもなお
何事もなかったかのように
私と笑いあっていた
私が生きてきた
時間の半分が
真っ黒に塗りつぶされる
思い出すのは
魂が抜けたような顔
人を馬鹿にしたような顔
私を睨んだ眼
人を否定し批判する言葉の数々
笑顔は全く浮かばない
今までと同じ環境で
あの人は今どんな顔をして笑い
その眼や口で
何を見
話しているのか
私がどれだけ考えても
あの人は何とも思ってない
母に言われた言葉を思い出す
それでも考えてしまうのは
私がまだ立ち止まったままだから
憎んだり恨んだり・・・もうそんな事はしない
自分だって変わってしまった
そんな自分を見つめ直し
また歩き出す
今はただそれだけを考える